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アフターコロナ第27回:乗り鉄ならではの視線ー連結切符購入をストレスフリーに

吉元利行 コラム

先月、所要のついでに、2回に分けて西日本の気になる列車に乗車した。初回は、9月23日に開業したJR九州の西九州新幹線「かもめ」。特急「リレーかもめ」と合わせて博多-長崎間を往復した。また、休祝日運行の特急「あそぼーい」、「ゆふいんの森」という2つのD&S(デザイン&ストーリー)列車を組み合わせ博多-別府間を往復した。二回目は、JR西日本の観光快速列車である「○○のはなし」と、今や唯一定期運行される夜行寝台特急「サンライズ出雲」である。

秋の観光シーズン、かつ、全国旅行支援が開始されたため、人気列車の希望の切符が取れるか心配であったが、JR各社の予約サイトとみどりの窓口を利用して無事に取れた。しかし、今回は、予約と乗車時にいろいろなストレスを感じた。

西九州新幹線のリレー方式に思う

乗り鉄ではない皆さんに、今回乗った列車を簡単に紹介する。最新の新幹線である西九州新幹線は、博多駅―長崎駅間をフル規格で結ぶ予定であるが、佐賀県の反対で、新鳥栖‐武雄温泉駅間の工事ができていない。したがって、博多駅から既存線路を走る特急「リレーかもめ」に乗って、武雄温泉駅で新幹線に乗り換える。乗換は同じホームなのだが、荷物の持ち運びと新たな座席への移動が面倒で、若干のストレスを感じた。

リレー方式は、九州新幹線が八代‐鹿児島中央駅で開通したときに似ている。しかし、今回は、佐賀県ではすでに嬉野温泉駅と武雄温泉駅が新設されているものの、地域の利益の少なさなどから、県がフル規格の新幹線に慎重な姿勢を見せている。この問題は、JR東海のリニアモーターカーの静岡通過問題とも似ている。いずれも、「全国新幹線鉄道整備法」に基づく路線の新設であり、いわば国家的なプロジェクトであるのに、地域利益の少なさが問題とされ、国全体の利益と対立している。

これに対して、中国における新幹線網の整備のスピードと世界一の路線網には目を見張るものがある。中国が旅客専用線を建設し、高速鉄道を走らせるようになったのは、2004年に「中長期鉄道網計画」が策定されてからで、2007年に初めての高速列車が登場してから15年で約4万㎞と我が国新幹線(約3300㎞)の12倍を超える長さを実用化している。わが国は、民主主義国で少数意見も大切にする国であるが、決定までのプロセスにおいて議論を尽くし、少数意見も踏まえた決定を見れば、決定後は多数に従うというのも民主主義であることを忘れてはならないと思う。

JR九州のD&S列車の充実

JR九州には、独特のデザインとストーリー性を持った列車が現在11編成ある。「あそぼーい」は、熊本から豊肥本線・日豊本線経由で別府まで非電化路線を走る。その名の通り、途中阿蘇を通り、また子供のあそぶスペースもあり、家族連れにも人気である。先頭車の運転席が座席の上にあるので、前面の景色がフルに見通せるのも人気の理由だ。同じ路線を走るD&S九州横断特急」ともども南阿蘇村の立野駅と隣駅の赤水駅の標高差188mを乗り越える三段式のスイッチバックが楽しめる。

別府からの「ゆふいんの森」は日豊本線・久大本線を経由して博多駅に戻る。途中湯布院に少し長めの停車をしたのち、天ケ瀬温泉や日田駅を経由して、久留米で鹿児島本線に合流して博多に戻る。ゆふいんの森は、一両目と最後尾は、運転席が座席より一段低いため、前面の景色を楽しめる。JR九州のD&S列車は、個性的なデザインで、内装、展示物、乗車スペースが配慮されており、車掌による沿線紹介や乗車記念の写真撮影サービスなどもあり、毎回非常に心地よい、充実の列車の旅を感じさせてくれる。

山陰線の旅

「○○のはなし」は、2017年に開催された「幕末維新やまぐちデスティネーションキャンペーン」を契機に運行を開始した列車。萩(ぎ)・長門(がと)・下関(ものせき)を経由すること、幕末期に活躍した志士達の歴史や文化、海の幸や地酒など、見て、聞いて、感じてみたい様々な「はなし」が息づいているということからこの名称が付いたという。全席が海側に向けて設置された車両(2両)が特徴で、山陰の海をゆっくり走る。時には一時停車したり、阿川駅ではホームにあるカフェでコーヒーやビールを購入できたり、記念撮影時間があるなど、気の合った仲間とのんびり旅するにはうってつけだ。なお、前回乗車したときは乗車記念に萩焼の湯飲みをもらったが、指定席券530円でこの体験ができるのは貴重である。

最後に、今回本命の「サンライズ出雲」では、ベットのある個室でお酒を飲み、シャワーを浴びた後、眠りながら早朝の東京まで帰った(実は、某勉強会がオンラインで開催されていたので、乗車後2時間ほどは、PCに向かっていた)。筆者としては、「サンライズ瀬戸」と今は亡き寝台特急「カシオペア」(上野―札幌)乗車以来の体験だ。ヨーロッパでは、脱炭素の観点から、寝台列車が国際間移動手段として見直され、どんどん復活しているJライブラリー|アフターコロナ第19回:既存インフラの再活用 (jintec.com)。日本もそうなってほしいものだ。

インターネット予約のもどかしさ

今回、別府から「ゆふいんの森」に乗るため、JR九州のネット予約で別府―博多間を予約しようとすると、日豊本線で北九州の小倉経由の特急と新幹線の組み合わせや、なぜか湯布院からの「ゆふいんの森」の特急券しか表示されないことがあった。JR東日本の「駅ネット」による「サンライズ出雲」の予約でも、途中から新幹線に乗り換えるパターンなど、継続して乗車を続ける特急券・寝台券が表示されなかった。また、下関から山陰線経由で出雲市に行き、東京に戻るときも、ネット購入では新幹線で新山口までいき、山口線経由で米子―岡山を勧められる。そこで、経由駅(3つまで)を入力し、新幹線や特急列車を除外指定すると希望に近い路線が出てくるが、短期間乗車する新幹線、特急や指定席のある列車を選択できなくなる。結局「サンライズ出雲」の予約だけネットで行い、乗車券はみどりの窓口で、「○○のはなし」の指定券は券売機で購入した。一つの旅程を予約するのに複数手段を使わねばならないことには非常にストレスを感じた。

いずれのシステムも、「早く目的地に到着する」という思想の下で設計されたものと推察される。しかしプライベートな旅行の場合、目的地を複数設定し、人によっては遠回りな経由地を選択することもある。乗客には、「早く着きたい派」だけでなく、「のんびり行きたい派」に加えて、「特定の列車に乗りたい派」がいることを忘れてもらっては困る。

事前予約は便利だが、もう一工夫が必要

最後のストレスは予約期間だ。JRの予約は乗車日の1月前からだが、インターネット予約ではその1週間前に予約の予約を受け付けている。しかし、座席の指定ができない。飛行機の予約のようになぜもう少し早くできないのか。座席指定もできないのか。超人気列車の座席は抽選制でも構わないが、グループでの旅行日程の調整、ホテルの予約、食事の予約等を考えるとせめて3か月くらい前から本予約できるようにしてほしいものだ。

ところで、今回ネットで買えない乗車券を購入しようと神田駅や有楽町駅のみどりの窓口に向かったところ、いずれも廃止されていた。調べたところ、2022年10月末現在、山手線駅では窓口は16駅に減っている。JR西日本の乗換駅で確認したところ、みどりの窓口はいずれも廃止されていた。すでにほとんどの特急券やお得な乗車券(大人の休日クラブ会員用も)は、インターネットか、券売機で購入できるから問題ないのだろう。問題は高齢者への対応と思っていたところ、券売機にカメラとモニターが付いた「みどりの券売機プラス」が設置されていた。券売機でお得な切符、指定券や新幹線乗り継ぎ割引などの購入方法がわからなければ、画面の「オペレーターと話す」を押すと券売機の上部のモニターにオペレーターが現れ、案内・説明を受けられる。操作が苦手と思われる高齢の婦人も、オペレーターの案内に従って、希望の切符を購入していた。カード決済、QRコード決済、現金決済が可能なので誰でも使える。今後は「みどりの窓口プラス」のオペレーター対応が中心となるのであろう。

紙の切符はいつまで続くのか

乗りつぶし派でJR路線全線走破済みの筆者としては、北海道・稚内から長崎・新大村駅までの各駅停車一筆書き最長の1万キロを1枚のJR切符でやり遂げる夢を持っている。その「最長片道切符」は、途中下車駅の押印も含めて、宝物になるだろう。しかし、乗り鉄でない方にとっては、JR路線・私鉄路線・バス路線も併せて、最終目的地まで一枚の乗車券でいけるほうが便利に違いない。そのためには旅客会社や経由駅をいくらでも増やせ、途中乗車の列車を指定できる柔軟な予約システムを構築する必要がある。乗車券もデジタル化する必要があろう。すでに、短距離ではデジタル乗車券は実現済みだ。デジタル「最長片道切符」には、乗車記録も併せて記録される。更なる記念となるに違いない。

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