Jライブラリー

Jintec Special Dialog1

ジンテック つなタイ-対談

Let’s Move On!‐先に進もう‐

人と人をつなぎ、新しい価値共創から、幸福を追求する。(ジンテック 企業理念)

Jintec Special Dialog “Let’s Move On!-先に進もう-”は、各分野で活躍する識者をゲストにお招きし、当社 代表取締役 柳 秀樹と共に、これからの組織や社会、世界、さらには人々の生き方や幸福について深く掘り下げ、「本当に大切なもの」を浮き彫りにしていく対談シリーズです。

「皆さんと共に、すべての人が幸福な、新しい世界を創造していきたい。」

私たちはそう願っています。Let’s Move On !

Let’s Move On!‐先に進もう‐Dialog 1

株式会社eumo 代表取締役 新井 和宏 氏 × 株式会社ジンテック 代表取締役 柳 秀樹

■ファシリテーター:株式会社eumo ユーモアカデミーディレクター岩波 直樹 氏
■対談日 2021年5月26日

第1回 Jintec Special Dialogのゲストは、「共感資本」をキーワードに、人々が自己実現や生きがいを感じ、持続的な幸福を得られる社会の実現を目指す 株式会社eumo 代表取締役 新井 和宏氏。「新型コロナウイルスは本質的なことをあぶりだした」と語る新井氏。コロナ禍による変化、新時代における働く意義、幸福とは何かを当社 代表取締役 柳 秀樹と語りあいました。


新型コロナウイルスによる変化

―新型コロナウイルスによって世の中が変わりつつありますが、その変化をいま、どう感じられていますか?

新井:未来をこれまでの延長線上に考えていた人たちも「あれ、なんか今までと全然違う世の中になってきた」ということを実感しているんじゃないかと思います。人と会うことが当たり前ではなくなり、コミュニケーションをとるだけではなく、信頼関係の構築ですらネットを介することが普通になりました。これってすごく大きな変化だと思うんです。通勤も含めて働き方、さらにはライフスタイルがここまでドラスティックに変わっていく事象って今までにはなかったですよね。ジンテックではどのようにコロナ対応をされてきましたか?

柳:はじめは社員の安全をどう確保するかで頭がいっぱいでしたね。ビジネスより優先すべきことがあるんじゃないかと考えたり。ただ、社員がそれぞれ自分の立場、もっている役割から業務を考えてくれて「できることをやろう」という雰囲気の中で緊急事態宣言に入っていくことができたのはとても頼もしかったです。進んでいた企画を実施できるよう、代替案をだしてくれたりもしましたし。

―コロナにより仕事に向き合う姿勢など、本質的なことがあぶり出されているように感じていますが、そもそもジンテックには社員の皆さんが自主的に動くような土壌、風土があったということですね。

柳:そうですね。当社は創業からそれなりに月日が経ち、今は「かつてのベンチャー」といった位置づけなんじゃないかと認識していますが、ここまでの道のりにおいては当然いろいろな経営的な危機があったわけです。それらを共に乗り越えていく中で、自主性や主体性が全社的に根付いていったのではないかと思っています。

―なるほど。いまの時代において、これまで以上に大切になってきていることはありますか。

新井:在宅ワークによって社員がいま何をしているかが見えなくなったことで、マネジメントの仕方は大きく変わったと思います。社員を簡単にはコントロールできなくなったんですね。そうなった時、経営者と社員の間で「信頼する・される」という関係性が構築できているかどうか、さらにはお金のためだけじゃなくて「ここに貢献したい」という思いがあるかどうかが、事業成長に大きな影響を及ぼすのは間違いないと思います。ですから「事業に対する共感性」というのはすごく重要な要素。本当に自分がその事業、商品、サービスを提供することに価値を、そしてやりがいを感じていないと自ら動いたりしないですもんね。

柳:私はコロナ以前から「充実」を大切にしてきました。平日はお金のために我慢しながら仕事をして、充実感は休日の私生活で満たす、という風に仕事と私生活を分離させるのではなくて、仕事も私生活も表裏一体であった方がよいと思っています。技術が発達したことによって選択肢が増え、特に時空間の制約はどんどんなくなってきていますよね。社会の流れも個々人の充実が基点であるという風潮に変わってきている中で、コロナによる加速度的な変化は必然であって、運命的なタイミングとも感じています。一方で「社会の構成員としていかに貢献していくのか」ということが問われているとも感じますね。

―生きること、働くことに対する認識がクリアになりつつある中で、「共感」は時代のキーワードの一つだと思います。そもそも「共感」はどうやって生まれるんでしょうか。

新井:マイクロソフトのCEOが「AIの時代になった時に、人間が人間たるゆえんは共感性にある」と言っていますが、「共感」は人間の本質的な部分であって、特に大事にすべきものだと思います。そもそも経済って共感による分業だったはずで、お金の循環は「自分の代わりにやってくれること」への感謝や応援の表現なんです。コロナによって社会全体、さらには世界全体でつながり、協力しないと解決できないところにきたことによって「自分の代わりにやってくれている人たちを応援しよう」という風潮がより生まれやすくなりましたよね。接点が持てないからこそ生まれてくる「共感」というものがあって、“思いをはせる”ことが距離を超えることに気づき始めたようにも感じています。


ジンテックの新企業理念

―ジンテックは昨年、企業理念を刷新されブランドブックも作られましたが、この絶妙なタイミングにはどんな流れがあったんですか。

柳:2018年頃、社会もお客さまも変化し続けている中で、当時の企業理念や行動指針ではフィットしなくなっていることに気が付きました。ビジネスを重ねる中で、単にシステムを提供するだけでなく、その先に行くためにはどうしたらいいのかを考えていった結果、結局は自分たちのほうにベクトルを向けていかないといけないと気が付いたんです。企業理念の刷新に向けては、社員と1年ほどいろいろな議論を重ねて、「私たちは何を問い直すべきか」ということへの今ここでの集大成が、この企業理念と行動指針だと思っています。

―どういうプロセスで、作られたんですか。

柳:各回、テーマを決めて議論を進めていきました。議論の場には経営陣だけじゃなく、各部署からもメンバーを集めましたが、毎回違うメンバーを出してもらい、できるだけ多くの人がものを言える環境にしました。「俺はこう考える」「わたしは違うと思う」ということをしっかり話していこうよと。部署に持ち帰って話し合ったりもしてもらいましたので、最終的に全員がかかわる形に。その結果、時間はかかっちゃいましたが、こういったことは時間をかけないと駄目だと思うんですよね。

新井:今は時間をかけずに効率的に、短期的に利益を出していくことが目的化されているので、時間をかけるということには経営者も、社員もアレルギーのような反応があると思うんですよね。じっくりやっている間に「こんなんやって意味あるんですか」みたいなものは出なかったですか?

柳:そこまでは出ませんでしたね。「社員同士がつながっていない、対話できていないのに、お客さまと対話ができるのか?向き合えるのか?」という話をこれまでもよくしていたからかもしれません。ITに関わるベンチャーですと「株式公開をしませんか?」というお話をいただくことがあるんですが、社員やお客さまとしっかり対話ができない人がどうやって株式市場と対話をするのかと考えてしまうんです。まずはそこを固めないと。株式市場からの要請は「短期的な利益」や「効率性」に重きが置かれることが多いですよね。そこに必死に応えるのはむなしいし、真のイノベーションがうまれにくく、結局はなにも残らないのではないかというのが私の持論です。組織文化をビジネスに照らし、しっかりと作り上げることがステークホルダー資本主義の初めの一歩だと思っています。株式市場を否定する気はないですが、対話をする順序があるんじゃないかと。

新井:そうですね。合理性や効率性自体は悪いことではないですが、手段を目的化することは問題です。結果として表れる効率性はよいですが、追い求めると違うところにいってしまいます。投資家たちも「これじゃあ持続可能性はない」とようやく気付き始めたというのがまさにいま。だからこそESGなんかを言い始めたとみています。一番重要なのは大事なことを見失わず、そこに向かって手段を講じること。順番を間違えると本質から外れていくということは、自然の摂理と同じですよね。そこが柳さんのお話から、じわっと滲み出てくるのは素敵だなと思います。

―時間をかけて理念を作ることは、経済合理性には直結しなくても、サステナブルな組織をつくるために重要だと考えられているんですね。じっくりと作っていったことで何か変化は起き始めていますか。また、どのような浸透策をとられているのでしょうか。

柳:理念の構築段階から全社員が関わっているので、押し付けられているという感覚がないのはよいですよね。「外向けに作るのではなくて、私たちが経営や日々の判断の指針にするものを作るんだ」ということも共有してきたので、この企業理念が非常に重要なものだということをみんながわかっています。理念は無理やり押し付けても意味がないので、浸透に向けて、部署を混ぜたシャッフルチームで毎週、対話をしています。その中では視点や考え方の違いがいろいろとでてきますが、それをいいか悪いかではなくて、理解しあい、学びあうきっかけにする。こういった取り組みも変化といえると思いますね。

新井:決定プロセスにコミットすることによってオーナーシップが芽生え、自分事になっていくというのは大事なことですよね。ただ、言葉がまとまると、全員が同じように見ていると考えてしまいがち。同じ方向を向いてはいても、本当は少しずつずれています。時間が経つにつれ、そのずれの角度が大きくなって、気が付くとみんなが全然違う場所にいっちゃう。だから「人は違うからずれるんだ」ということを意識し続けることがすごく大切だと思います。多様性を受け入れながら理念の実現に向かって活動されているというのは素晴らしいですよね。


共感を基にした共創の時代へ

―ジンテックの新企業理念では人とのつながり、価値の共創と書かれていますが、ここまでの理念刷新プロセスそのものもそうなっていますよね。

新井:すごいことですよね。

柳:これまではスキル偏重で個々のパフォーマンス重視でしたよね。でも、パフォーマンスだけに注目しているとみんな利己的になっていき、組織としての力が生まれません。だから例えばスポーツでも、個の力が際立つトップパフォーマーばかりを揃えても、なかなか優勝できない。ですから、スキル偏重、パフォーマンス重視というやり方には、限界があるんだと思います。この先、あっという間にミレニアル世代やZ世代が社会の中心的役割を果たすようになっていきますが、彼らはつながりに対する感応性が非常に高い。そうすると「スキル」「パフォーマンス」というキーワードだけで自己成長するような世の中ではなくなると思うんです。勝ち負けや収奪の社会ではなくて、社内外に関わらず、共につくり上げるような世界になっていくと思っています。

―新井さんはeumoで社会における共感プラットフォームのようなものをつくられていますが、この先の世界をどのようにみていますか?

新井:僕は「健康的な経営、健康的な生き方」がとても大事だと思っています。人間って意識をしないと偏ってしまう。そして、そうしたバランスの悪さが人間社会を良くない方向に導いてしまうと考えているんです。経済が成長しても、充実感も幸福感も感じられない。「もっと頑張れ」とばかり言われてしまうのが今の社会。だから、eumoでは「バランスの良い、健康な社会って?」「どうやったらできる?」ということを皆さんと一緒に考えながら次の社会を作っていきたいと考えています。われわれの理念は「共感資本社会の実現」ですが、バランスが崩れた今の社会を、共感の力、あるいは共助の仕組みによってもとに戻したいんです。「社会をより幸せな、充実する方向に持っていくための仕組みづくりをみんなとやっていこう」というのがeumoの発想。多様な価値観を受け入れながらコ・クリエーションできるような仕組みを創出したいと強く思うんです。

―柳さんは事業に向けてどういった思いをお持ちで、どんな世界を描いていらっしゃいますか?

柳:社長就任から10年以上経ち「クライアント企業がその顧客に支持されるためのお手伝いをする」ということが見えてきました。そして、そこにフォーカスして提案した企画が成功すると、クライアントからの反応がとても大きかったんですね。そこから、こういう視点でビジネスのお手伝いすることは、大きな充実感をもたらしてくれるだけでなく、ビジネスとしての成長、さらに先のフェーズにいくことにもつながるんだろうと考えました。そんな時に新井さんから“共感資本社会”についてお聞きして「あ、そういうことだ」と得心したんです。共感があるからこそお客さまへの貢献が自分たちに戻ってくる。やっぱり収奪ではないなと。

新井:ジンテックのブランドブックに「パートナー」という言葉が出てきますが、結局は全てがパートナーであって、搾取している状況で関係性が続くというのは、ありえないんですよ。夫婦だって退職金をもらった途端に離婚をされちゃうのは、結局そこまで搾取をしてきたということ。これは今の法定通貨で表現できることの限界でもあると思います。お金は大切だけれど、お金以外の大切なものもしっかり生み出して、お金にならないこともちゃんとやっていかないと。お客さんや周りの人との感謝と共感の関係性がなく、「全部俺がやった」みたいになってしまうと、搾取の状態が起きてばらばらになってしまいます。だから、これからは共感を基にして、共創していく時代。これは間違いないと思います。

―こういった時代の流れが全部詰め込まれているジンテックの企業理念は本当に素晴らしいですし、素敵な会社だなと思いますね。

新井:このコロナ禍でも、素敵な時間を積み上げてきたというのを感じますよね。ジンテックは金融機関のクライアントも多いと思いますが、ブランドブックに金融的なエッセンスがないのもすごいなと思って。

柳:そうですか?

―金融業界全体をよくしていくための活動もされていますよね。そういうところまでされていることに、本気度を感じています。

新井:そうやってシンプルに「これは必要だし、役に立つことをやろう」としていると、だんだん自分たちのやっていることを説明しづらい状態になりますよね。そこには業界という意識がないから。「これは何になるんですか、売り上げに役に立つんですか」みたいなことも薄くなっていく。だから、ジンテックはこれからますます型にはまらない組織になっていくんだろうなと容易に想像できます。それが、また魅力的なんですよね。


どのように幸福を実現していくのか

―ジンテックの企業理念には「幸福の追求」という言葉が入っていますよね。「幸福の追求」を実現していくためにお二人が普段からやられていることはありますか。また、「こういうやり方もあるよ」といった、皆さんに道筋を示すようなお話もあればお願いします。

柳:日常の中にも大事なことはいろいろありますよね。家の中で家族がお互いに思いやるということも、家庭の充実につながります。ビジネスにおいては、習慣化することを決めるのもいいと思います。お会いした人に必ずお礼状を書くとか、必ず決まった時間に出社するとか、生活のリズムを決めることは、多少の波があっても要所でしっかり軸になってくれますから。一番大切なのは相手を思いやるということ。すべては作用と反作用なので、自分だけがいい思いをするなんてことはありえなくて、自分から思いやりを送れば、必ず戻ってきます。それをみんなで積み重ねることでこそ、すべての人が幸福になっていけるんだと思います。

―こういったお話を柳さんの言葉で伝えていくことも、ジンテックの理念の実現に向けての一歩になっていきますよね。いろんな場所で、いろんな言葉で本質的なことを伝えていく。この対談もそういった場の一つだと思います。新井さんはいかがですか?

新井:簡単に言えば「大切にしたいもの、大切にしたいことを大切にする」ということです。それが日々できていれば充実するし、幸せに近づける。意外と大切にしていないんですよ。明日もあると思っているから。あとは、人に何かをしてもらうことが当たり前で、自分がしてあげることは当たり前じゃないと思っている人が多いですよね。でも、人にいろんなことをやってあげられる自分、そして、人から何かをしてもらったときにありがたいと思える自分でいられたら幸せになれます。これは人としての生き方だから年収とは関係がなくて、どんなにたくさんお金を持っていても、人に差し出せなかったり、感謝できない人は不幸になっていきます。

―なるほど。

新井:利他、利己という話もありますが、みんな自分が大事なのは当然で、どっちもあるもの。でも利他はみんなとつくるものだから、どんどん広がって、結局はそれが人間の器になります。器を大きくしていくことで、真の幸せが手に入るんです。自分を整えるためのルーティーンを持つのもいいと思います。私は朝、蛇口から水を出すときに「ありがとう」を3回言うことにしているんです。いまの日本に生まれたからこそ簡単にきれいな水が手に入る。地球上にはお金を払ってもきれいな水にアクセスできない人も数多くいる。そういうことをイメージできることが、自分を整えていくためにとても大事なことだと思っていて。もちろんそのやり方はみんな違っていい。自分を整えるために何ができるかを考えて、素敵な自分になっていくことが、結果的にみんなの幸せにつながっていくんだと思うんです。

―お二人のお話をお伺いして、大切なことを大切にする仲間がここにいることをとても頼もしく、嬉しく感じています。新しい社会を共創していく、ともに進んでいくことが楽しみですし、すでにもう始まっていることもあるように感じます。本日はどうもありがとうございました。

※感染対策を十分行った上で対談・撮影しております。


【対談パートナー】
新井 和宏氏
株式会社eumo 代表取締役
ソーシャルベンチャー活動支援者会議(SVC)会長

1992年住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)入社、2000年バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)入社。公的年金などを中心に、多岐にわたる運用業務に従事。2007~2008年、大病とリーマン・ショックをきっかけに、それまで信奉してきた金融工学、数式に則った投資、金融市場のあり方に疑問を持つようになる。2008年11月、鎌倉投信株式会社を元同僚と創業。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い2101」の運用責任者として活躍した。鎌倉投信退職後の2018年9月、株式会社eumo(ユーモ)を設立。

著書に『投資は「きれいごと」で成功する』(ダイヤモンド社)、『持続可能な資本主義』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『幸せな人は「お金」と「働く」を知っている』(イーストプレス)、『共感資本社会を生きる』(共著・ダイヤモンド社)

【ファシリテーター】
岩波 直樹氏
株式会社 eumo 取締役 ユーモアカデミーディレクター
株式会社 ワークハピネス Co-Founder
一般社団法人 ユーダイモニア研究所 理事

大学卒業後、富士銀行(現みずほ)入行。2002年ワークハピネスを共同創業。組織開発、人材開発を専門領域に現在も活動中。2017年社団法人ユーダイモニア研究所を共同発起人として立ち上げ、理事に就任。ポスト資本主義等の次世代社会システム創造の研究と実践に取り組む。2018年11月~2019年6月、内閣府知財戦略本部価値共創タスクフォース委員に就任。大企業のオープンイノベーションおよび新たな時代の社会創造についての知見と具体的アクションを促進する報告書をまとめる。2019年株式会社eumo立ち上げに参画。同7月取締役就任。人間性の発達や認識の拡大をもたらすためのeumo Academyを設立しディレクターを務める。

pagetop